Brilliant Grunt

各種作品の感想、批評。或いは、ただのメモ。

【小説】のぼうの城

のぼうの城 上 (小学館文庫)

のぼうの城 上 (小学館文庫)

のぼうの城 下 (小学館文庫)

のぼうの城 下 (小学館文庫)

 領民からでくのぼう、縮めてのぼう様と呼ばれている成田長親は、何を考えているかもわからぬ表情で民の田植えを妨害し、しかしそれでも、なぜか民からの信頼は厚く、姫様が事件を起こした際も人知れず解決へと導き、姫の心をも捕えてしまうのである。そんな中、三成軍が2万を引き連れて攻めてくるので、北条氏に与する成田家は狼狽するが、実は裏で手を引いている者がいて、城は開門する手はずだったのだが長親は三成に宣戦布告、ここでもなぜか農民は長親のなの字をだされると喜び勇んで戦に参加するという人望のあつさをみせつけるのである。それでも農民と兵士の合計は数千。ある門にはおじいちゃん兵士ばかりだったりするのだが、猛将たちはなんとか防衛し、三成が超巨大水攻めプロジェクトを開始すると、長親は踊り始めるのである。
 読みやすい歴史小説だった。のぼう様はもう本当にうつけなのかと思っているとそうでもなく、不器用なルフィ感があるのである。つまりは、まったく感情や内心を描かれないけれども、一向にその行動が理解されないのである。酒巻の多感さに非常に共感して、おじいちゃんたちに心配されるシーンは危うく泣きそうになったのである。