Brilliant Grunt

各種作品の感想、批評。或いは、ただのメモ。

【エッセイ】失敗談 外山 滋比古

失敗談

失敗談

 とかく人は失敗を恐れがちで、一度失敗すればもはや再起不能であると思い込んでしまうが、そんなことはないと外山氏は言う。むしろ失敗したほうがよい、むろん成功するに越したことはないが、その結果が慢心を呼んでしまうことは多々あるので、少し失敗したほうが長期的にみるとプラスに転じているのである。つまるところこれは失敗することを恐れるなというエッセイであり、後半になってくると物忘れしてもええじゃないか、という主張が始まり、七転び八起きは果たして七回転んで八回起き上がるのかという疑問を投げつけてくるのである。

【小説】イラハイ 佐藤哲也

イラハイ (新潮文庫)

イラハイ (新潮文庫)

 イラハイという国で行われる、論理的でいてばかばかしい、えげつない壮大な物語。国王は民衆に唾を吐き、善良な青年の花嫁を奪い去ると、国民を次々と徴兵しはじめ、それを危惧したある男の父は岩の下へ隠れ、その息子は復讐を誓い凶悪なカエルを率い、そのカエルは精子を放ち次々と人間の男たちを妊娠させ、例の国王の息子である王子は豚の代わりに樽の中で塩漬けとなる。嫁を奪われた青年は奪還を決意するものの、荒すぎる波に翻弄され、ふわふわとなすがままに身を任せ、やがてイラハイは崩壊への一途をたどっていくのであるが、そんな中ではたして二人の愛は取り戻されるのか、というのがこの物語の大事なところなのである。
 森見登美彦氏の文体に似ていると思った。いや、森見氏が佐藤氏に似ているのか。論理的で硬いのにあほらしく、まったく情緒不安定で、とりとめもない。

【心理本】バカボンのママはなぜ美人なのか 嫉妬の正体

 少女マンガ家である著者は子供のころからとかく嫉妬深い性格だったようで、幼少期から今に至るまでどんな嫉妬をしてきたかを赤裸々に綴っている。また、嫉妬についての自らの分析を余す所なく公開し、女の人が何に、なぜ嫉妬するのかも書いている。そして、嫉妬する人へ向けてのアドヴァイスと、嫉妬の本質に迫ろうと試みている。
 この本は強いて言うならば、嫉妬の炎に狂いすぎて何がなんだかわからない、という人をまともな人に近付けるようにしてくれる本だろうか。アドバイスは別段良いことが書いてあるわけではなく、常識的なことであるし、嫉妬の正体といっても、特に目新しい、なるほど思えるようなものではなかった。そして嫉妬の炎に木をくべるのに忙しい人はそもそもこの本を手にすることもなく、この本を見ようと思う人はすでにまともなのではないだろうか。もちろん誰でも嫉妬をした経験はあるだろうが、この著者はすべてをさらけだしていて、そこは正直だなと思うものの、だんだん嫌悪感に似たものを覚えてしまうのである。