Brilliant Grunt

各種作品の感想、批評。或いは、ただのメモ。

【小説】イラハイ 佐藤哲也

イラハイ (新潮文庫)

イラハイ (新潮文庫)

 イラハイという国で行われる、論理的でいてばかばかしい、えげつない壮大な物語。国王は民衆に唾を吐き、善良な青年の花嫁を奪い去ると、国民を次々と徴兵しはじめ、それを危惧したある男の父は岩の下へ隠れ、その息子は復讐を誓い凶悪なカエルを率い、そのカエルは精子を放ち次々と人間の男たちを妊娠させ、例の国王の息子である王子は豚の代わりに樽の中で塩漬けとなる。嫁を奪われた青年は奪還を決意するものの、荒すぎる波に翻弄され、ふわふわとなすがままに身を任せ、やがてイラハイは崩壊への一途をたどっていくのであるが、そんな中ではたして二人の愛は取り戻されるのか、というのがこの物語の大事なところなのである。
 森見登美彦氏の文体に似ていると思った。いや、森見氏が佐藤氏に似ているのか。論理的で硬いのにあほらしく、まったく情緒不安定で、とりとめもない。