Brilliant Grunt

各種作品の感想、批評。或いは、ただのメモ。

『想像ラジオ』 いとうせいこう

想像ラジオ

想像ラジオ

 想像ラジオ、それは誰もが自由に聞くことが出来る。想像なので、ラジオがあろうとなかろうとどこでだって受信でき、好きな曲が流れ、遡ることも可能である。DJは、高い高い杉の木の頂上で、仰向けになっている男。彼は愛する妻と子が気がかりで、その思いが想像ラジオ開設に至らしたのかもしれない。リスナーはまたたく間に増えるが、肝心の人の耳には届かない。そして、ある人はその存在を感じるが声は聞こえず、車の中でよくわからない議論をしては想像ラジオを聞こうとする。やがて、木の上のDJは家族の声に耳を傾け、お父さんとお兄さんは先に旅立っていく。
 主人公の語りは良いけれど、Sさんがよくわからず、車の中での議論もいまいちピンとこないし、ラストが思ったよりパッとしなかった。全体的に、良く分からない、という印象。感動というのも特になかった。

文学のことば

文学のことば

文学のことば

 良い言葉はどこに潜んでいるかわからない。新聞の一見出や段ボール箱の文字も、これは詩だ、と思ったりするらしい。著者が良いと思った言葉とか小説などが延々と紹介されていく。
 ここで紹介された本を何冊かは読もうと思った。あとは元号から西暦への変換方法が参考になった。

辞書を編む 飯間浩明

辞書を編む (光文社新書)

辞書を編む (光文社新書)

 三省堂国語辞典編纂者の飯間氏が語る、辞書の作り方。まずは、三省堂国語辞典を最初に作り上げた人が超人過ぎて畏れおののいた。著者はあらゆる情報媒体から、あるいは街中、人の会話から言葉を採集していく。そしてその言葉の解釈、語釈を考えていく。時には、「キャバクラ」を定義するために実際に行ってみたりするのである。あくまで「調査」である。
 読んでいくと本当に辞書によっていろいろな違いがあるんだなとわかった。そして実はネットの辞書に敵対心を持っているわけではないことも判明し、また、辞書とは、語数が多いだけが良い辞書ではないと著者は自信を持って述べる。