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『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』 今野晴貴

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)

 ブラック企業が若者を大量に雇っては優秀な者を残し、いらない者は「合法的」に圧力をかけ辞めさせる「選別」を行うため、あるいは残業代も払わず働くだけ働かせた末に捨てるため、多くの若人は精神や社会的な諸々を破壊され、表面上は自主退職なので社会の救済は受けられず、そのツケは民衆が払うことになり、子供を作る余裕など生まれるはずもないので少子化は進行し、老人ホームでは虐待が横行する。ブラック企業がのさばれば、日本国の未来が危ぶまれると、今野氏は憤っている。
 本書では、なぜ、どのようにブラック企業が労働者を喰いつぶすのか、それから個人としてどのように立ち向かっていけばよいのかが説明されている。また、ブラック企業が個人だけでなく日本全体に与える影響を解説。
 
 あらゆる企業がブラック化する可能性を秘めており、我々一人ひとりが、監視し、「俺がこの企業を変える」ぐらいに思わなければならないのだ。けれども、実際、恐怖に縮こまって、社会すべてブラックではないのかと思えてくる。できれば関わり合いたくないし、すぐにでも退避したい。しかし、逃げていてもブラック企業は無くならない。みんなが戦略的思考を養い、戦っていけば、ブラック企業は自然消滅するはずだと今野氏は述べる。
 この本は読みやすくて、わかりやすく、多少の勇気をもらった気がする。締めくくりには、今野氏の清々しい希望を感じた。