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【ノンフィクション】ルポ 子どもの貧困連鎖 教育現場のSOSを追って

ルポ 子どもの貧困連鎖 教育現場のSOSを追って

ルポ 子どもの貧困連鎖 教育現場のSOSを追って

 

 日本の子供に貧困はないと言う人がいるが,貧困は見えにくいし,見ようとしなければ見えないのだ,と著者は言う。

 本書では高校生編,中学生編,小学生編,保育園編と順に貧困の問題を抱えている子供,家庭が紹介され,各章の最後には専門家のインタビューが載っている。

 高校編では駅のトイレで寝泊まりする女子高生や,オブラートで空腹をしのいだり,アルバイトと学業に追われ二時間しか眠れなかったり,良い学校に入ったものの,弁当で周りとの格差が現れてしまい「貧乏人」といじめられたりする。過食症になり,親にも問題がある中で,「私がだめなんだ」と自分を責めてしまう。ぜんそくを患った女の子は過労で倒れるが,父親は救急車を呼ぶのをためらう。そして,貧困は自己責任なのかという問い。

 中学編。母親に問題があって,親戚に娘二人が預けられる。しかし母親や娘らの希望で両者は同居するが,次第に問題が発生していく。片付けられない母親に長女は憤怒し,それに対して怒った母親が長女の口にティッシュを詰め込み黙らせてしまい,動揺した次女からの電話で担任が飛んでくる。

 小学編。保健室は子供たちの駆け込み寺であった。大阪府のある小学校。始業の前に朝食を求めて行列ができた。保健の先生が,朝食を食べていない子にお菓子をあげたのが始まりだった。その中のある女の子は母子家庭であったが,母親は仕事と祖父の介護でうつ病を発症してしまい,最終的には倒れてしまう。ある父子家庭,女の子はちゃんとした栄養もとれず目が悪くなり,黒板も見辛くなる。だが,メガネを買うことは出来ない。父親は「メガネ代は二週間分の食費」と。

 保育編。ある保育園の園長が奔走する。真夏に車で寝泊まりする一家。そこにはわずか五歳の男の子もいた。祖母は保育園にこの子だけでも泊まらせて欲しいと言い,結局児童相談所が引き取ることになるが,父親と祖父が怒鳴りこんでくる始末であった。ある男の子は義母に虐待を受け,ガリガリに痩せ細ってしまう。またある女の子の家庭の貧困に,園長が東奔西走して生活保護を受けさせるが,一家は失踪してしまう。

 と云う感じで,ほんとに抜き差しならない状況の家庭ばかりが出てくるのである。特に高校生編では,自分がなんと恵まれている環境で,どれほど自分が甘えているかを改めて思い知らされた。