Brilliant Grunt

各種作品の感想、批評。或いは、ただのメモ。

【ノンフィクション本】長沢鼎 ブドウ王になったラスト・サムライ

 わずか10数才で勉学のためにイギリスへ渡り,数年後アメリカへ移って,その後カリフォルニアでブドウを自家栽培し,高級ワインを作り,伝説になるサムライの話。
 
 1860年代,来日していたイギリス帝国兵士を薩摩藩士が斬り捨て御免したことを発端に,薩英戦争が勃発。武器の性能に大きな開きがあり,薩摩藩はボロ負けする。英国の力を思い知った薩摩藩は,その文化・技術を吸収するため複数の学生を留学させることを決定する。その中には最年少,13歳の長沢の姿があった。武士の家に生まれた長沢は小さい頃から厳しい教育で,母との別れ際も涙一つ見せない剛毅さを見せる。イギリスへ渡った後は,勉学に励みながらも,多くの苦悩を抱え,成長していく。
 
 あのエジソンや自動車王のヘンリー・フォード,植物の魔術師のバーバンクと肩を並べていたらしい。特にバーバンクとは肝胆相照らす間柄。
 カリフォルニアワイン醸造の先駆者である。こんなすごい日本人が居たのかと,驚く。そしてもっと知られていても良いのに,とも思った。
 曲がったことはしない真っ直ぐな人で,深い叡智を持っている,しかも付き合う人付き合う人みんな高尚な人ばかりである。バーバンクの植物と人間の話や,医者との死についての話は哲学的で,感じるものがあった。